富士山の植物学 - 五合目が境目になる | 富士山エリアの総合ガイド - フジヤマNAVI
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富士登山では植物が生えない砂利や岩の斜面を登るイメージが強いと思います。しかし、大半の登山者がスタートする河口湖口や富士宮口の五合目へのバスは樹林の中を縫って登っていきます。それが五合目近くで木々がまばらになり、丈も低くなって樹林が開けます。さらに五合目から六合目へ登る途中で背の高い木は姿を消し、一面、砂利や岩の斜面に変わります。五合目付近は、その上には樹林が見られなくなる森林限界になっているのです。
山に登ると、高いところほど寒冷になり、生える植物が変わってきます。この変化は徐々にではなく、ある高さを境にかなりはっきりと変わり、帯状の分布を見せることから垂直分布と呼ばれます。日本全体が大きく4つに分けられ、下から平野帯、山地帯、亜高山帯、高山帯と名づけられて、富士山ではその境目が900m、1600m、2500m前後になります。五合目の標高は河口湖口が約2300m、富士宮口が約2400mで亜高山帯と高山帯付近になります。
富士山付近で自然のままに植物が茂れば、平野帯では主にシイやカシなどの常緑針葉樹、山地帯ではブナやミズナラなどの落葉広葉樹、亜高山帯ではシラビソ、コメツガなどの常緑針葉樹の林となります。しかし、亜高山帯から高山帯に入ると、高い木が育つことができず、ごく低い木や草しか生えないので風景が急に変わります。亜高山帯と高山帯の境目は、この上では森林が見られないことから森林限界と呼びます。
各登山口の五合目をつなぐ形で標高2400m付近を一周する道があり、お中道と呼ばれています。現在では崩落で一部しか通れませんが、江戸時代に隆盛を極めた富士山信仰登山の修験の道で、3回以上、山頂に立った人のみが歩くことを許されたとされています。お中道はちょうど森林限界付近を通り、下の樹林帯を木山、上の荒涼とした高山帯を焼山と呼び、それぞれを俗界と他界(死後の世界)に見立ました。そして、木山から焼山を往復することで、この世の罪とけがれをはらったとされています。