【特集】井出醸造店 | 富士山エリアの総合ガイド - フジヤマNAVI

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富士の伏流水と冷涼な気候が造り出す酒 井出醸造店

年間2,000万人近い観光客が訪れるといわれる日本有数の観光地、富士五湖。
河口湖の南岸にある井出醸造店の酒蔵の入り口には、新酒の時期の訪れを告げる丸い杉玉が吊るされ、酒蔵の奥では、蒸された酒米の蒸気がもうもうと立ち上がっている。
「何層もの地層で、長い年月をかけて自然濾過された富士の雪解け水と、標高850mの河口湖の厳寒期に醸造する、いわゆる“寒造り”の酒です。」
そう説明してくれたのは、井出醸造店の21代当主、井出與五右衞門氏だ。

精米~仕込み

井出醸造店を訪ねて

今回訪ねた井出醸造店は、江戸中期(1700年頃)に始まった醤油醸造を前身として、幕末(1850年頃)に16代当主の井出與五右衞門が清酒の製造を開始したという老舗酒蔵。富士の伏流水と厳しい冬の寒さが、酒造りには極めて好条件であるという。

酒蔵と酒造りの工程を見学

蔵は11月から3月までのちょうど仕込みの期間。厳選された米、清冽な水を用いて蔵人が丹精を込めて作業をする様子を見学させていただいた。
日本酒造りには、酒造好適米という酒造りに適した米が使われる。中心部にうまみ成分となるデンプンが含まれているため、精米工程では外側から30~70%を磨いて雑味の原因となる部分を取り除いていく。精米後、ご飯を炊く場合と同様に糠を取るための洗米工程を経る。

酒造りでは米を「炊く」のではなく「蒸す」。香り、味、感触などを判断して最適な水分のバランスをとる。
蒸し上がった米を口に含むと、中は柔らかく、外には適度な弾力をもっていた。

蒸し上がった米は放冷機に入れて冷却する。目標温度まで冷ました米は、粒が壊れないよう人の手によって丁寧に麹室へ運ばれる。テキパキした作業に、つい、見入ってしまう。

タンク内の温度を上げたり下げたりしながら温度変化に弱い酵母をふるいにかけている。
仕込みタンク内は発酵によって二酸化炭素が発生し、無酸素状態になっているため、ライターの火も消えてしまう。
また、この発酵工程ではブドウ糖が酵母の働きによってアルコールに変化していくが、酵母が存在しなければ甘酒のような飲み物ができるとのこと。

上槽~瓶詰め

タンクから運ばれた醪(もろみ)を酒袋に詰め、圧搾して酒と酒粕に分ける作業を行う「槽場(ふなば)」と呼ばれるところ。蔵の中でも最もいい香りがするという。酒粕には、人間の体内では作ることが出来ない必須アミノ酸や美白効果のあるコウジ酸が含まれており、井出醸造店ではこの酒粕を使ったプリンやチョコレートといったスイーツも販売している。
「“エコ”が叫ばれて久しいですが、日本酒造りは二千年以上も前から無駄なく資源を有効に活用するということを行なっていたんです。」

貯蔵蔵は、室内温度が年間を通して7℃に設定され、巨大な冷蔵庫のよう。この大きなタンク1つで一升瓶(1.8L)約2,700本分が仕込まれる。槽場で搾られたお酒はタンクの中に詰められ、来年の秋~再来年という出荷のときを静かに待ち続けていた。

瓶詰めの様子。このときは濁りのあるお酒を詰めていたため、綺麗に映えるよう青色の瓶を使用していた。

酒好きとしては、ビールがなければ始まらず、芳醇なワインの香りは人を魅了するし、なめらかな舌触りと長い余韻の続くモルトウイスキーもとても好きである。
「なぜ各地に酒造会社があるのかわかりますか?それぞれの地域の食との相性の素晴らしさを味わうのも楽しいですよ。」とは井出社長の弁。
日本酒の成分の80%は水だというから、良い水のあるところで、良いお酒が作られるということがよく理解できる。その風土に合わせて生み出されたお酒を、その地の料理とともに味わう。もちろん、その地に訪れて。
富士の麓のテロワール(≒水)で造られるお酒と料理のマリアージュ、ぜひ楽しんでいただきたい。