【特集】シャトーメルシャン | 富士山エリアの総合ガイド - フジヤマNAVI

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シャトー・メルシャン

独自の個性を生み出す日本ワインのルーツを訪ねて

春はお花見や歓送迎会などお酒を楽しむ機会の多いシーズン。「とりあえずビール」も美味しいが、今年はワインを口にした方も多いのではないだろうか。国内のワイン市場が4年連続で伸びるなどブームに沸いている昨今、グラスワインの種類が充実したレストランが増え、ワインバーや気軽なビストロも街でよく見かけるようになった。しかし、よくわからないからといって、出されたワインをただ飲んでいるだけでは楽しさは半分。熟成した美味しいワインの樽が開く春から初夏こそ、国産ワイン誕生の地ともいわれる山梨県は勝沼(現甲州市勝沼)に足を運び、ワインの知識を仕入れてみてはいかが?そこで今回、編集部では「シャトー・メルシャン」のワイン造りを取材した。

有料のワイナリーツアーは参加必須

シャトー・メルシャンは、カフェ、ショップ、資料館が付設され、自由に見学、利用できる。とはいえ、せっかく足を運ぶなら、ワイナリースタッフがシャトー・メルシャンのワイン造りの説明や地下セラーの見学、テイスティングなどを案内してくれるワイナリー見学ツアー(有料)を是非申し込みたい。

ワイナリーエリア地図
資料館外観
ワイナリーツアー日程
資料館外観
ビジターセンターマップ

ビジターセンターで基礎学習

早速ビジターセンターに集合し、地下へ。まずはビデオによるレクチャーを受ける。ワイン造りは、ブドウの破砕→圧搾(赤は種・皮ごと、白は果汁のみ)→果汁の発酵→発酵後のワインの樽貯蔵→瓶詰の工程で進められるとのこと。
続いて温度管理された瓶熟成庫や樽貯蔵庫などワインを保管するスペースを見学。大きな樽が整然と並ぶ様子は圧巻である。ところでこの樽、中心部分が赤く塗られているのにお気付きだろうか。これは、テイスティングなどでワインを抜き取る際に、多少こぼしても汚くならないように赤くなっているということで、細かいことではあるがスタッフのワイン造りへの愛着を感じることができる。

ビジターセンターレクチャー風景
ビジターセンター画像
樽貯蔵庫

そしてお待ちかねのテイスティングへ。この日、用意されたのは「シャトー・メルシャン勝沼甲州2011」、「シャトー・メルシャン城の平ロゼ2011」、「日本の地ワイン山梨マスカット・ベリーA2009」の3種類。ここでテイスティング方法についての説明が。ワインアドバイザーの星野さんによれば、テイスティングは目→鼻→口と上から下に順に進めていけばOKとのこと。具体的には、まず目で見て色を観察し、次に鼻で香りをチェック(このとき最初からグラスを回さずに、まずはそのまま、次にグラスを回して空気に触れさせてから嗅ぐようにすると通っぽい)、そして最後に口に入れる。個人的には、場面や料理を選ばず広く合わせられそうな辛口のロゼに感心した。ちなみに星野さん曰く、このロゼにはシュウマイやハムサンドといった軽めの肉料理を合わせると良いそう。

ワイン画像
シャトー・メルシャン勝沼甲州2011
シャトー・メルシャン城の平ロゼ2011
日本の地ワイン山梨マスカット・ベリーA2009
シャトーメルシャンワイン画像
ワイン資料館

ワイン資料館と祝村ヴィンヤード

現存する日本最古の木造ワイン醸造所の貴重な建物を使ったワイン資料館では、メルシャンの誕生やワイン造りの変遷を辿る年表や、実際に使われていた醸造器具、過去に販売していたワインの瓶などが展示され、日本のワイン造りの軌跡を学ぶことができる。そして資料館の裏手にあるのが「祝村ヴィンヤード」。ここでは、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、シャルドネ、甲州などワイン醸造用の17品種が植えられ、実際に栽培を担当しているスタッフから説明を受けることができる。このときはちょうど芽が出始めた頃だったが、収穫の前(8月頃)にツアーに参加すればブドウを味見することも可能。「皮が厚く種も大きいけど糖度は高く、意外に美味しいですよ」とは星野さんのお言葉。

スタッフから説明風景
木造ワイン醸造所
シャトーメルシャンワイン画像
ワイン樽見学風景
シャトーメルシャンワインブドウ園
シャトーメルシャンワインブドウ園
祝村ヴィンヤード
ワイン樽貯蔵庫風景

インタビューシャトー・メルシャン チーフワインメーカー 生駒 元さん

日本ワインのパイオニア「シャトー・メルシャン」

いつの時代も日本のワイン造りの第一人者として走り続けるメルシャン。特にこの勝沼の醸造所では、毎年収穫されるブドウの出来などによって生まれるビンテージ毎の個性を大事にして、メルシャン、ひいては世界における日本のワインの将来像を形作っていくという重責も担う。このシャトー・メルシャンで、若くして製造部長を務める生駒元(いこま げん)さんに同社のワイン造りについて話を伺った。

MERCIAN WINE

生駒さんの写真

ワイン造りはポエムとサイエンスの融合

生駒さんは1994年に入社し、藤沢工場を経て、2004年から3年間はアメリカ・カリフォルニアのナパのワイナリーでワイン造りを学び、帰国後は勝沼でワイン造りを行なっている。アメリカでは、ワインメーカーについて栽培から醸造までを一貫して学習してきたが、その経験を活かし、今ではブドウの収穫のタイミングに非常に気を遣うそうだ。「ブドウの状態は常に変化していて、収穫の時間帯の違いが香り成分に影響を及ぼすんです」。このことは、昨年2012年の「ASEV 日本ブドウ・ワイン学会」において同社から研究結果が発表されたことでも話題になった。

また、世界的にも有名なボルドー第2大学において、醸造学部の研究員だった故富永敬俊博士とメルシャンとの出会いが、日本のワイン造りに大きな影響を与えていると生駒さんは言う。富永博士は、甲州種を使用したシャトー・メルシャンの代表的な白ワイン「甲州きいろ香」の技術指導をした方として有名だ。博士は「ワインはポエムとサイエンスとの融合」というのが口癖だった。「“こういうワインを造りたい”という想いだけでは、なかなかいいワインはできない。ワイン造りを科学し、裏付けを取ることで、最短距離で目指すべき美味しいワインを造ることができる」と話す生駒さん。世界を見回しても、良いワインを造るワイナリーは、しっかり科学しているとのこと。

シャトー・メルシャンのワイン造り
生駒さんの写真

世界で通用するワインをつきつめていきたいし、日本の食に寄り添ったワイン造りもしていきたい

ワインメーカーとして生駒さんが目指す到達点はどういったものか。「日本ならではのワイン造り、日本のワインはどうあるべきか、模索している」。世界に通用するワインを突き詰めていくことで、イタリアやフランスのワインばかりを好んで飲むような人にも、日本ワインに目を向けてもらうことができると生駒さんは言う。また一方で、日本の食に寄り添ったワイン造りも常に念頭に置いていて、量販店の比較的安価な輸入ワインなどで日常的にワインを楽しんでいる層に対して、シャトー・メルシャンを選んでもらうために重要なアプローチであると考えている。

ワインを知ればもっとおいしい

何かを食べながら楽しむことでポテンシャルがより一層発揮されるのがワイン。日本の土地で育った作物や、日本的な味付けが持つ、淡白さ、繊細さ、そこから感じ取れる奥ゆかしさや上品さ。こうしたものと、同じ日本の土地(テロワール)で育った日本のワインを合わせることは、日本人ならではのワインの愉しみ方といえるのではないだろうか。

ワイン