富士山の植物学 - 高山植物が少ない理由は? | 富士山エリアの総合ガイド - フジヤマNAVI
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日本アルプスや八ヶ岳などの高山では、高山帯にもさまざまな植物が育ち、夏には一斉に花が咲いて、お花畑も見られます。富士山でも、五合目付近の樹林帯や森林限界付近では草木が茂り、気をつけて歩くとさまざまな花も見つかります。しかし、森林限界を超えると、緑が急に少なくなるとともに、種類も激減します。この違いも富士山の特徴で、富士山が生まれた時期などの秘密が隠されているのです。その秘密を探ってみましょう。
日本の高山に生える草や木の多くは、ご先祖様が北極海周辺からやってきたと考えられています。7万年ほども昔に始まった最終氷期で広がる雪や氷に追われるようにして南下して、当時、大陸と陸続きだった日本まで分布を広げました。ご先祖様たちは、約1万年前に氷期が終わるとともに北へ帰って行ったのですが、一部は寒冷な地を求めて高山に登り、今も生き続けているのが現在の高山植物というわけなのです。
日本アルプスなどは氷期の終わりには、すでに現在と同様の山地が造られていたと考えられています。しかし、富士山が現在の形になったのは新富士火山の活動が一段落した1万年前ごろとされます。つまり、富士山に草木が生えられる状態になったのは氷期が終わってからで、高山植物たちのご先祖様たちは富士山に登る機会を逸してしまったのです。さらに、富士山は砂利や小石、岩がむき出しの荒原で、環境が厳しいことも植物が少ない理由となっています。
少ないとはいえ、富士山に育つ高山植物もあります。これらの花たちは、風や鳥によって種が運ばれてきたと考えられています。また、オノエイタドリなどは低地のイタドリが高所に登り、高山性になったものとされています。オノエイタドリ、同じ仲間のオンタデなどは土や養分が少ない荒原でも育つたくましさを持つことから、真っ先に荒原に入りこみ、富士山の高山帯では最も目立つ植物となっています。