お鉢めぐり
富士山は古くから神として崇められていましたが、1149年に末代上人が山頂に寺院を造り仏像を奉納したことから、富士山信仰の修行はより具体化されるようになりました。道者たちは山頂でご来光を拝み、山頂の噴火口の外周を一周する「オハチ巡り」をしました。富士山の山頂には剣ヶ峰をはじめとする峰が八つあり、当時は仏様が座る蓮華座を見立てて「八葉」と呼んでいました。「オハチ巡り」の「ハチ」はこの八葉が由来になっています。
現代に生きる私たちもご来光を拝み、「お鉢めぐり」を楽しんだりしていますが、これらは信仰登山の精神が後世に引き継がれたものです。
※ここでは富士山信仰の修行として噴火口の外周を回っていた時代は「オハチ」とカタカナ表記で、現代の登山コースのひとつとして外周を回ることを「お鉢」と表記して区別しています。
標準コースタイムと距離と時間
標準コースタイム|距離|時間
一周|2.6km|約1時間半
※「お鉢めぐり」は時計回りでも、反時計回りでも、どちらで回っても時間的にはあまり違いはありません。到着したコースの頂上からスタートしましょう。
コースのポイント
■山頂にある信仰の遺跡群をめぐることができる
■日本で一番標高の高い場所をぐるりと一周
■時計回り・反時計回りのどちらでもOK(修行の場合は時計回り)
■体調が悪い場合、悪天候時は無理せずに
お鉢めぐり(山頂の信仰遺跡群めぐり)の歩き方
ここでは吉田・須走ルートの頂上から時計回りに1周するコースを紹介しています。
久須志神社(東北奥宮)→大日岳(朝日岳)→伊豆岳(阿弥陀ヶ岳)
吉田ルートと須走ルートの頂上は、久須志神社前になります。まずは久須志神社を参拝し、売店のならぶ方向(時計回り)に進みます。トイレは山頂に2箇所ありますが、そのうちのひとつが茶屋の近くにあります。
吉田・須走ルートの下山道を左手に見て、丘のように小高い場所に進みます。ここが大日岳(神仏習合時代の呼び名は朝日岳)山頂で、ご来光スポットとして多くの登山者が集まります。山頂には鳥居があります。
少し戻って登山道に入り、さらに伊豆岳(阿弥陀ヶ岳)を目指します。
大日岳山頂
成就岳(勢至ヶ岳)→銀名水
伊豆岳は山頂を通らず、ピークを巻くように歩きます。このあたりの東側は急斜面で切れ落ちていますので、足元に注意しながら進みましょう。
伊豆岳を過ぎるとやや下り気味になり、本コース3つ目のピーク成就岳(勢至ヶ岳)が右手に見えます。成就岳も山頂部分を通らず巻くようにして進みます。
東安河原(賽ノ河原)と呼ばれる平坦な場所をゆるやかに下り、御殿場口の頂上に到着します。右手に銀名水があるので確認していきましょう。銀名水は溶岩の間から雪融け水が湧き出てきたところで、いまは祠が祀られています。
奥に見えるピークが伊豆岳
駒ヶ岳(浅間ヶ岳)→浅間大社奥宮→剣ヶ峰
さらに進むと浅間大社奥宮のある広場に出ます。ここが4つ目のピーク駒ヶ岳(浅間ヶ岳)ですが、ちょっと分かりづらいかもしれません。富士宮口の頂上、山頂郵便局、トイレ、売店があり、常に多くの登山者で賑わっています。トイレの左側のピークが5つ目の三島岳(文殊ヶ岳)ですが、ここも山頂には行かず北側の登山道を進みます。
目の前には最高峰の剣ヶ峰がそびえています。ここが本当の富士山頂で、山頂の標高は3775.6mです。剣ヶ峰山頂へはものすごく急な坂道を往復しなければなりません。ここの下りが一番怖く感じるという登山者もいます。
剣ヶ峰には旧富士山測候所の建物がそのまま残っており、せまい山頂ですが眺めは抜群です。
旧富士山測候所が残る剣ヶ峰
剣ヶ峰を目指す
白山岳(釈迦ヶ岳)→金名水→久須志岳(薬師ヶ岳)
急な斜面を往復して、お鉢めぐりの登山道に戻ります。剣ヶ峰の下部を通りますが、7月上旬だと残雪が残っている場合もありますので、通過には十分注意してください。
西安河原と呼ばれる平坦な場所を歩きます。しばらくは火口がよく見えて、惑星の探索のような気分を味わえます。左前方には南アルプスや八ヶ岳の山並みも見えます。
左手に少し窪んだ地形が見えたら、小内院と呼ばれる火口です。富士山のもうひとつの火口で、対岸に雷岩と釈迦ノ割石が見えます。その延長上の山が7つ目のピークで白山岳(釈迦ヶ岳)です。
すぐに分岐がありますので、金名水に進むには分岐を見逃さないよう気を付けてください。登山道から分岐を右に入ると、富士山の神聖な水として祀られている金名水があります。金名水から火口縁を登っていくと登山道に合流し、右へ進めば8つ目のピーク久須志岳(薬師ヶ岳)に到着です。